士業事務所のホームページ(ウェブサイト)を作る場合、まずはおすすめのコンテンツ配置パターンで構成できないか流れを検討していただきたいのですが、
- 訪問者側のコピーを配置するのがどうしても難しい
- 既に「お任せください」で作ったウェブサイトがある
というケースでは、次善の策として訪問者の立場から要望や悩みのセリフが入ったバナーを小さくページ冒頭に配置することで、反応率の向上が図れることもあります。
訪問者の立場に立った希望や悩み
ところで、トップページが前述のおすすめパターンに近い内容でしっかりと作り込まれていても、各業務に関する個別のサービス紹介ページは、士業事務所側からの業務内容が簡潔に列挙されているのみ、という作りになっていることも多いです。
この理由は、訪問者側で生じている「こんなことで悩んでいる」、「こういう要望がある」という思いや要望はキャッチコピーとしてトップページに配置されており、そこからその悩みや希望の解決手段として、各個別の業務案内ページにリンクを張って誘導するというウェブサイトの構造がとられているためです。
この構造によって、誘導先である個別の業務案内のページでは、トップページのコピーと重複する訪問者側の悩みや要望には触れずに、冒頭から業務内容(手続きの流れや料金、対象者や相談方法など)だけが事務的に列挙されることになります。
業務案内ページこそ入口と考える
しかし別の記事で触れたとおり、トップページからの訪問者はウェブサイトが育つにつれしだいに比率が下がっていき、逆に個別の業務案内ページなどが入口として機能する比率が上がっていきます。
近年は、この傾向がさらに進んでいます。検索結果の上部にAIによる要約が表示されるようになり、用語の意味を調べているだけの人は、ウェブサイトを開かずに用が済むようになりました。そのぶん、入口として残るページは業務案内のページへ寄ってきています。
そして業務案内のページが入口となる訪問者は、業務を依頼する可能性が高い検索語句で訪れていることが多く、その訪問者に対して訪問直後にしっかりフォローすることは、ウェブサイトの反応率向上に直結しやすい点には注意が必要です。
にもかかわらず、業務案内ページからウェブサイト内に流入した訪問者に対し、士業事務所側からの主張のみが列挙されているようでは、訪問者に「まだあなたのこと、どこの誰だか知りませんけど!?」という感情を抱かせ、直帰を促してしまいます。
手間のあまりかからない「次善の策」
既に業務紹介ページが出来上がって公開状態にあるなら、日々の業務の合間にこのページを修正することが難しい状況であることも多いでしょう。
その場しのぎ的な対策ではありますが、そんなときは訪問者に「このサイトは自分の探していたところかな?」と立ち寄ってもらう機会を増やすためにも、訪問者側の立場から小さなバナーを冒頭に配置してみてください。
冒頭から「〇〇業務のご案内」とやってしまうよりも、「〇〇をしたい方へ」とか、「〇〇でお悩みの方向けサービス」など、訪問者の立場を少しでも取り入れたほうが(かつ、それをバナーという訪問した瞬間に目に入るアイテムとして用意できれば)、その先を読むか読まないか、他のサイトに移るか否か、瞬時の判断は変わってくるはずです。
業務名ではなく訪問者の状況を主語にする
バナーに入れる言葉を考えるときの目安は、主語を入れ替えることです。
「〇〇業務のご案内」は、事務所が提供するものを主語にしています。これを、その業務を必要としている人が、いまどんな状況にいるのかに置き換えます。
資格ごとに例を挙げると、次のような具合です。
- 行政書士:「建設業許可申請のご案内」→「元請けから『許可を取ってほしい』と言われた方へ」
- 司法書士:「相続登記のご案内」→「亡くなった親の名義のままになっている不動産がある方へ」
- 税理士:「相続税申告サービス」→「相続税の申告が必要なのかどうか、まだわからない方へ」
- 社会保険労務士:「就業規則の作成」→「はじめて就業規則を作ることになった方へ」

矢印の右側の言葉を読んだとき、当てはまる人は「あ、自分のことだ」と感じます。当てはまらない人は、その時点で別のページへ移っていきますが、それは構いません。バナーの役割は全員を引き留めることではなく、依頼する可能性のある人に「ここで合っていますよ」と伝えることだからです。
元の「〇〇業務のご案内」という見出しは、消さなくて大丈夫です。バナーのすぐ下に、そのまま残しておいてください。
1点だけ注意があります。結果を約束するような言葉や、不安をあおる言葉は、バナーには入れないでください。訪問者の状況をそのまま言葉にする範囲にとどめておくのが安全です。所属される会の広告に関する規程も、あわせてご確認ください。
言葉は相談の第一声から拾う
「そうは言っても、どんな言葉を配置すればいいのかイメージしにくいな」と思われた士業さんもいらっしゃるかもしれませんが、コピーを考える必要はありません。相談者が実際に口にした言葉を、そのまま使うのが近道だからです。
- 電話を受けたとき、相手が最初に言った一言
- お問い合わせメールの、書き出しの1行
- 初回の相談で「実は……」と切り出された内容
直近の相談を3件ほど思い出して、それぞれの第一声を書き出してみてください。「〇〇の件でお電話したのですが」という用件そのものではなく、その前後にある「取引先から急に言われて」「役所から通知が届いて」といった部分に、バナーに使える言葉が入っていることが多いです。
なお、特定の相談者だとわかってしまうような言い回しは避けて、何人もの方から共通して聞く言葉を選んでください。
最近はAIにコピーの案を出してもらうこともできますが、何も材料を渡さずに頼むと、どの事務所にも当てはまる無難な言葉になりがちです。AIを使う場合も、個人が特定できる内容は除いたうえで、上で書き出した言葉を材料として渡すほうが、事務所に合った案が出てきやすいでしょう。
バナーは文字で作りページタイトルのすぐ下へ
バナーというと、画像を作ってはめ込むものを思い浮かべる方も多いと思います。ですが、ここでいうバナーは、文字で作っても問題ありません。薄い色を敷いた枠の中に、1行か2行の文字が入っている。その程度のもので十分です。
画像ではなくテキストのままにしておくことには、次のようなメリットがあります。
- スマートフォンで見たとき、画像の中の文字は小さくなって読みにくい
- 検索エンジンやAIには、画像の中の言葉が伝わりにくい
- 言葉を変えたくなったとき、画像だと作り直しになる
3つめは、今回のような「次善の策」では特に効いてきます。文字であれば、管理画面で打ち直せば済みますので、反応を見ながら何度でも言葉を入れ替えられます。
置く場所は、ページタイトルのすぐ下です。入れたあとは、ご自身のスマートフォンでそのページを開いて、スクロールしなくてもバナーの言葉が目に入るかを確かめてください。大きな写真や目次がバナーより上にあって、最初の画面に言葉が1つも見えない、という状態は避けたいところです。
そしてバナーのすぐ下に、資格者の氏名と対応している地域を1行で添えておくと、先ほどの「どこの誰だか知りませんけど!?」への答えにもなります。
個人向けの業務なら1ページの漫画という方法もある
相続や遺言、障害年金のように、企業ではなく個人の方からの依頼が中心になる業務では、バナーの代わりに、1ページだけの簡単な漫画を冒頭に配置するのも効果的です。
バナーに入る言葉は、1行か2行です。漫画であれば、「何がきっかけで困ったのか」「誰に聞けばよいのかわからなかった」「相談してみたらこうだった」という流れを、短い時間で読んでもらえます。文章を読むのが得意ではない方でも、漫画なら最後まで目を通してもらいやすいのではないでしょうか。
さらに、その漫画の中に士業さんご本人が登場すると、訪問者は読みながら「この人に相談すると、こんな感じで話が進むのか」と、相談の場面を先に体験することになります。いわば疑似相談です。まだ電話もメールもしていない段階で、一気に距離を縮められる可能性が出てきます。
「いやいや、漫画なんて描けないし、頼んだら高いでしょう」と思われた士業さんもいらっしゃるかもしれません。ここでいう漫画は、何ページもある作品ではなく、4コマから6コマほどが1枚に収まったものです。この分量であれば、イラストレーターさんに依頼しても、比較的頼みやすい範囲に収まるのではないでしょうか。
作るときに気をつけたい点を、いくつか挙げておきます。
- 登場する士業さんは、ご本人に似せて描いてもらう……プロフィール写真や、実際に会ったときの印象と離れすぎない
- スマートフォンで読める文字の大きさにする……コマを詰め込みすぎず、吹き出しの文字は大きめに
- 漫画の上か下に、同じ内容を1行か2行の文字でも添えておく……漫画の中のセリフは画像なので、検索エンジンやAIには伝わりにくい
- 「依頼したらすべて解決しました」という結末にしない……相談してみたら次に何をすればよいかがわかった、というところで止めておく
なお、実際にあった相談をそのまま漫画にするのは避けてください。何人もの方に共通する場面を組み合わせて、特定の相談者だとわからない形にしておく必要があります。
一方で、企業の担当者が比較検討のために読むことが多い業務では、漫画よりも、先ほどの文字のバナーのほうが合っていることも多いです(ただし、最近は漫画が置かれていても違和感を感じない企業担当者さんも増えてきましたが)。訪問者がどんな人なのかに合わせて、使い分けてみてください。
重要と思う業務から手を入れてみよう
すべての業務案内ページに、一度に入れる必要はありません。まずは、入口としてよく使われている業務案内ページや、士業さんが「この業務が重要だ」と思われるものを1つ選んで、バナーを入れてみてください。どのページが入口になっているかは、上でご紹介した記事の方法で確認できます。
入れた日付は、念のためメモしておきましょう。しばらくたってから、そのページを開いた人の反応や問い合わせの件数を前後で見比べると、バナーの言葉が合っていたかどうかの目安になる可能性があります。
手応えがあれば、ほかの業務案内ページにも順に広げていくきっかけにもなりますよね。






