もし、ホームページからの問い合わせメールや相談電話はそこそこあるものの、依頼まで至りにくい状況に陥っているなら。
原因のひとつとしては、メールの返信や直接の相談までに時間・日数がかかっていることが考えられます。
WEBから直接の受任を図る上で「いかに対応を早くするか」という初動の速度は非常に重要な要素になります。
紹介案件は安心感・信頼感を借りることができる
ホームページからの集客ではなく、他社・他業種からの紹介で進む案件は、他社・他業種と依頼者の間で既に信頼感が醸成され、安心を感じている状態です。そのため紹介された側の事務所は、その信頼感・安心感をそのまま借りて業務を進行することができます。

この場合、仮に用件に対する応答が多少遅くとも、依頼者の側では「あの人の紹介だから、まあ大丈夫だろう」「何か作業を進めてくれているのだろう」と考えていますから、あまり不安なく次の手順を待ってもらえる状態です。
ホームページ案件は安心感・信頼感がゼロからスタートする
一方、何らかの業務を頼もうとしている人が、ネットでホームページを調べて問い合わせてくる状況はというと、相談者と士業との間にまだ何の信頼感も安心感も構築できていません。

そのため、相談者の頭の中には「ここはしっかりと手続きを進めてくれる事務所なのだろうか」「他のホームページから別の事務所に頼んだほうがよかったのではないか」という心配が非常に生じやすいです。またそれによって待ち時間も長く感じられ、最終的には早期に「反応がないから別の事務所に頼もう」という結論に至ってしまいます。
ホームページの訪問者は、競合する幾多のホームページの中から「ここが良さそうに見えるが…」と特定のホームページを選択して、相談のメールや電話というアクションを起こしている状態です。そのため、早期に「自分の判断は間違っていなかった」という安心感を得たいのです。
電話は「いまなら話す時間がある」という理由でかかってくる
またアクションがメールではなく電話の場合は「いまなら話す時間がある」というタイミングで架電してくるケースも多いので、そのタイミングを逃してしまうと電話での会話さえできずに終わってしまうことも。この辺は、電話秘書サービスなどを利用している事務所さんでは実感しやすい部分ではないでしょうか。
ホームページ訪問者が電話をしたタイミングで電話秘書が仮にその電話に出た場合でも、「折り返しご連絡いたします」との案内によって「なら結構です」で断られてしまう。これらは前述のように「いまなら話す時間がある」けれども「折り返されても話せるかはわからない」ため、いったん断られてしまう状態に陥っています。
近年は、事務所の電話をスマートフォンへ転送する仕組みや、複数人で受けられるクラウド型の電話サービスなど、選択肢がかなり増えました。「外出中は電話に出られない」という前提そのものを、技術である程度は崩せる時代になっているとはいえます。
口コミという「第三の経路」も生まれました
ここまで「紹介」と「ホームページ」を対比させてきましたが、現在はもう1つ、その中間にあたる経路ができています。Googleの検索結果やマップに表示される、事務所の口コミです。
事務所を探している人が、ホームページを見て、そのあとに口コミを確認してから連絡してくる。あるいは逆に、マップで見つけた口コミを読んでからホームページへ来る。こうした動きが当たり前になりました。
この場合、相談者は完全なゼロスタートではなく、「他の人もちゃんと対応してもらえたらしい」という、薄い信頼を持った状態で連絡してきていることになります。紹介ほど強くはありませんが、何もないよりは格段に有利です。
ただし注意が必要なのは、口コミが担保してくれるのは「この事務所は大丈夫そうだ」というところまでだという点です。連絡した後に反応が遅ければ、「口コミは良かったのに、実際はこんなものか」と、かえって落差が大きく感じられます。
信頼の入口が増えたぶん、その先の初動で失う損失も大きくなった。そう捉えておくほうが実態に近いと思います。
最初のメール返信、最初の直接相談までの時間を短縮させる
そこで、士業事務所でホームページを使ったウェブ集客・営業を行う際には、お問い合わせメールへの最初の返信をいかに短時間で(かつ安心できる内容で)送ることができるか、また直接相談までの日数をいかに短くすることができるか、電話ならその場で出ることができるかが、とても重要になってきます。

この時間・日数が短いほど、相談者に「しっかり対応してくれる事務所だろう」「このまま任せておけば大丈夫だろう」という思いを抱いてもらいやすくなりますから、結果として受任率に大きく関わってくることになります。
よくある例えですが、キャッチボールのボールをできるかぎり相手の側へ投げ返している状態がよいわけです。
スケジュール上、すぐ直接の相談を入れることが難しい場合には、まず初動のメール往復段階だけでも、レスポンス良く対応することが求められます。
では、どのくらいの速さを目指せばよいのか
「早く返信しましょう」とお伝えすると、次に「具体的にどのくらい?」というご質問をいただきます。
業務の性質によって差はありますが、目安としては、営業時間内に届いた相談には数時間以内、遅くとも当日中に1通目を返すところから始めてみてください。翌営業日にずれ込むと、その間に他の事務所へ連絡されている可能性が非常に上がります。
特に注意したいのが、次の2つのタイミングです。
- 金曜の夕方以降に届いた相談……月曜の朝に返信すると、相談者の体感では3日近く待たされたことになります
- 連休前に届いた相談……同じ理屈で、放置される期間が一気に伸びます
相談者は、こちらの営業日カレンダーを知りませんし、知っていても待ち時間の体感は変わりません。「営業日で数えて2日」は、相談者にとっては「4日も返事がない」のです。
そして、自分の事務所の実際の初動速度を把握している士業さんは、意外と少ないものです。直近10件ほどの問い合わせについて、届いた日時と1通目を返した日時を書き出してみてください。感覚と実際のズレが見えてきます。想像より遅い、という結果になることがほとんどです。
返信の目安を、あらかじめ書いておく
もう1つ有効なのが、お問い合わせフォームの近くに「◯営業日以内にご返信します」と明記しておくことです。
待たされる不安の正体は、時間の長さそのものより「いつ返ってくるか分からない」という見通しのなさです。目安が書いてあるだけで、同じ時間でも体感はかなり変わります。
速ければいい、というわけでもありません
ここで1つ、補足が必要です。
初動を速くしようと意識するあまり、1通目が「お問い合わせありがとうございます。追ってご連絡いたします」だけになってしまうと、速さのメリットはある程度失われます。相談者の具体的な不安は解消されていないためです。
理想は、1通目の段階で相談者が「ここに頼んで大丈夫そうだ」と思える材料が入っていることです。具体的には、次のような内容になります。
- 相談内容を、こちらが正しく理解していることが伝わる一文
- その手続きが、事務所として対応可能かどうか
- 次に何が起こるのか(面談の日程調整に進むのか、追加で聞きたいことがあるのか)
- おおよその費用感、または費用を確定させるために必要な情報
- 手続き全体で、どのくらいの期間がかかりそうか
すべてを詳しく書く必要はありません。相談者が知りたいのは「この先どうなるのか」という見通しですから、それが分かる程度で十分です。
よく使う業務については、あらかじめ1通目の型を用意しておくと、速さと内容を両立できます。毎回ゼロから書いていては、どうしても時間がかかりますから。
自動返信メールは「1通目」にはなりません
お問い合わせフォームの自動返信を設定している事務所さんも多いと思います。これは「届きましたよ」という事実を伝える役割として有効です。
ただし、自動返信は上で挙げた1通目の代わりにはなりません。相談者の側も、それが自動で送られたものであることは分かっていますから、安心材料としての効果は限定的です。
そしてもう1つ、見落とされがちな重大な問題があります。その自動返信、本当に相手に届いているでしょうか。
設定の仕方によっては、自動返信が相手の迷惑メールフォルダに入ってしまったり、そもそも送信されずに消えていたりすることがあります。事務所側への通知メールが届かず、相談があったこと自体に気づいていないというケースも実際にあります。
これでは初動の速さ以前の問題です。月に一度でよいので、ご自身でフォームからテスト送信して、事務所への通知と自動返信の両方が届くことを確認してください。
オンライン相談で「直接相談までの日数」は縮められます
この記事を最初に公開した当時と比べて、もっとも大きく変わったのがここです。
かつては「直接相談までの日数」を短縮しようにも、お互いの予定と移動時間という物理的な制約がありました。今週は無理なので来週に、という調整が当たり前で、その間に他の事務所へ流れてしまう。これが取りこぼしの大きな原因でした。
現在は、初回の相談だけオンラインで行うという選択肢があります。30分程度であれば、お互いの予定の隙間に入れやすく、移動も発生しません。数日後にしか押さえられなかった面談が、翌日の昼休みに入る。この差は、受任率にそのまま表れます。
すべての相談をオンラインに切り替える必要はありません。初回だけオンラインで方向性を確認し、必要であればその後に対面で、という組み合わせが、士業事務所には合っていることが多いです。相談者にとっても、いきなり事務所へ足を運ぶより心理的なハードルが下がります。
ただし、導入する際は次の点にご注意ください。
- 相談内容によっては、通信環境を含めた守秘の確保に配慮が必要です
- 相談者の年齢層によっては、操作の説明を丁寧に行う必要があります
- 本人確認や原本確認が必要な業務では、どこかの段階で対面が必要になります
- 対応している旨を、ホームページ上にはっきり書いておかないと使われません
最後の項目は特に重要です。オンライン相談に対応していても、ホームページに書いていなければ、相談者は「この事務所は来所しないといけないのだろう」と判断して、連絡自体をやめてしまいます。
なお、業務によってはLINEでの一次相談や、ウェブ上での日程予約を取り入れている事務所もあります。相談者側のハードルは確実に下がりますが、士業事務所の場合は守秘義務や記録の残し方との兼ね合いがありますし、簡単に短文で送れるツールは意外と回答する側の負担が大きくなることも多いです。その辺は業務の性質や事務所の取扱業務、そして対応に割けるキャパシティで判断してください。すべての事務所におすすめできるものではありません。
既に紹介で回っている事務所がネット集客をはじめるとき
既に紹介で経営が成り立っている事務所は、感覚として身についている反応までの時間・日数が、紹介を前提としたものであることは十分意識しておくほうがよいでしょう。
新たにインターネットを利用したウェブ集客・ホームページ営業に踏み出すのであれば、現在の対応時間・日数で適切かどうか、よく検討しなければなりません。
特に、ホームページからの問い合わせはあるものの、「もう他のところに頼んだよ」と言われた経験が複数回あるなら、それは最初の反応が圧倒的に遅いことを表しています。
複数人で運営する事務所なら、担当スタッフの見直しやスタッフ間の連携を強化する。一人経営の事務所で外回りが多いなら、モバイル環境を整えてどこからでもメールの送受信・電話応対を可能にするなど、最初の反応までの時間を短縮できるよう、業務フローを改善してみましょう。
まずは、ここから確認してみてください
最後に、この記事の内容を確認用にまとめます。
- 直近10件の問い合わせについて、1通目を返すまでにかかった時間を書き出す
- 金曜夕方・連休前に届いた相談が、どう扱われているか
- 1通目の文面に、費用感や今後の流れなどこの先をある程度想像できる情報が入っているか
- フォームからテスト送信し、通知と自動返信が届くか
- オンライン相談に対応しているなら、その旨がホームページにわかりやすく書いてあるか
- お問い合わせフォームの近くに、返信の目安が書いてあるか
ホームページの見た目やアクセス数を改善するより、この初動の部分を整えるほうが、受任率への効き方はずっと速いことも多いです。そして大抵の場合、この改善には費用もほとんどかかりません。
「問い合わせはあるのに依頼にならない」という状態が続いているなら、まずはここから手をつけてみてください。




