士業のホームページも、活用の基本的な考え方はシンプル

なんでオレここに居るんだっけ?

士業事務所でウェブサイト(ホームページ)を営業手段として活用していくときは、基本的な考え方を意識して、目的達成に効果的と判断する個別の施策を行っていく必要があります。

資格試験の勉強を経験していることが関係あるのかないのか、士業の方にはウェブサイトもガイドブックなどで「重要ポイント」「必ず行っておくSEO対策」など書かれている部分を重視して、熱心に取り組まれる傾向が(他の業界と比較して)強いように見受けられます。

しかし、その重要ポイントやSEO対策は何らかの目的のための手段であり、それ自体が目的ではありません。枝葉の部分に捉われすぎてしまうと、ウェブサイト本来の目的から、次第に方向性が逸れているのに気づきにくくなってしまいます。

士業のウェブサイトで基本となる考え方

士業さんがウェブサイトを設置する目的のほとんどは、そのウェブサイトから何らかの反応(電話やメール)を得て、業務の依頼につなげることでしょう。

そうであるなら、士業のウェブサイトを制作する場面においても、公開後に運用する場面においても、重視しなければならない木の幹は、ごくシンプルな流れになります。

  1. 見つけてもらう……検索結果やマップに、事務所のページが表示される
  2. 開いてもらう……表示された中から、そのページが選ばれる
  3. 読んでもらう……開いてすぐ戻らず、内容に目を通してもらう
  4. 連絡してもらう……電話やメール、予約といった行動を起こしてもらう
  5. 依頼してもらう……相談のやり取りを経て、実際の業務につながる

ウェブサイトに対して行うあらゆる作業は、この5つのどこかを良くするためのものにほかなりません。

そして重要なのは、この流れは途中で切れると、そこから先に進まないということです。

いくら検索結果の上位に表示されても、開いてすぐ戻られてしまえば意味がありません。じっくり読んでもらえても、連絡先が分かりにくければ止まります。連絡が来ても、対応の仕方で依頼にならないこともあります。

何のためのメタタグやCVRなのか

ここでごく基本的な考え方を紹介させていただく理由は、繰り返しになりますが枝葉の部分に手間や時間をかけすぎているケースが、本当に多く見受けられるからです。

ウェブサイトの設定項目に何を入れればよいのか、ウェブサイトのCVR(Conversion Rate)がどのくらいが適切か、などという問題は、すべてそれ自体が重要なのではありません。検討項目や指標などは、上記のフローの流れをいかによくするかというための、手段や判断基準に過ぎないからです。

従って、ウェブサイトに何か施策を行う際は、それがフローのどこを強化する(あるいは補てんする)ものなのか、最終目的の達成率は向上するのか、意識して取り組むほうが効果の薄い作業に時間ばかり割かずに済みます。

いま「枝葉」になりやすいもの

この記事を最初に公開した2014年当時、士業さんがもっとも時間を費やしていた枝葉は、メタキーワードの設定でした。

現在では、この項目は検索順位にまったく影響しないことが広く知られるようになり、そもそも設定する画面すら用意されていないことも増えました。

とはいえ、枝葉そのものが無くなったわけではありません。中身が入れ替わっただけです。近年、士業さんが時間を取られやすいのは、次のようなものではないでしょうか。

  • AI検索対策として売られている施策……新しい言葉で提案されますが、中身を聞くと従来からの基本の言い換えである可能性も
  • 構造化データの設定……入れておくに越したことはありませんが、これを入れたから上位に表示されるというものではありません
  • 表示速度の点数……計測ツールの点数を満点に近づける作業に没頭してしまうケース。ある程度の速さがあれば、それ以上は体感に差が出ません
  • 被リンクの購入……ポリシー違反です。時間を使う以前の問題として、手を出さないでください
  • 記事の本数のノルマ……月◯本という目標だけが目的化し、中身の薄い記事が積み上がっていく状態です
  • AIによる記事の量産……同じことを多くの事務所がやっているため、ただ数を増やしても差はつきません

これらがすべて無意味だと言いたいわけではありません。フローのどこを良くするのか説明できるなら、取り組む価値があります。

問題は、説明できないまま「やったほうが良さそうだから」という理由だけで時間を使ってしまうことです。10年前はそれがメタキーワードで、いまはAI対策という名前になっている。そんな状況だと本末転倒が続くだけになってしまいます。

細かな設定がなくても集客は可能

具体的な話として少し極端な例を挙げると、ページの細かな設定項目をまったく調整せず、Google Search Console(以前はウェブマスターツールという名称でした)にも登録せず、外部のウェブサイトからほとんどリンクされていないウェブサイトでも、幹となる部分がしっかり考えられたものであれば、集客につながる可能性はあります。

設定項目をどうするか迷ったり修正している時間を使って、もし効果的なコンテンツを1つでも増やすことができるなら、そのほうが目的達成にはベターな場合も多いでしょう。

※念のため申し添えると、Search Consoleへの登録自体は済ませておくことをおすすめします。無料ですし、Googleに認識してもらえるまでの時間を短縮できますし、どんな言葉で検索されているかという幹に直結する情報も得られます。

施策を思いついたときの3つの問い

「フローに立ち返って考えましょう」とお伝えしても、実際の場面では判断に迷うかと思います。

そこで、何か新しい施策を検討するとき、次の3つを自分に問いかけてみてください。

1.これはどこを良くするためなのか

見つけてもらう、開いてもらう、読んでもらう、連絡してもらう、依頼してもらう。このどれに効くのかを言葉にしてみます。

説明できないなら、その施策は保留で構いません。複数に効くという答えが出た場合も、いったん「主にどこか」を1つに絞ってみてください。曖昧なまま進めると、効果の判定もできません。

2.いま、そこが問題となっているのか

たとえば、検索結果の上位に表示されているのにアクセスが少ないのであれば、詰まっているのは「開いてもらう」段階です。ここで記事を増やしても、状況は変わりません。

逆に、アクセスはあるのに問い合わせがないのであれば、「読んでもらう」か「連絡してもらう」のどちらかが詰まっています。この状態で検索順位の対策をしても、もったいない話になります。

どこが詰まっているかを先に見極めてから、そこに効く施策を選ぶほうが効果的です。

3.効果が出たかどうかをどう確認するのか

実施した後、何を見れば効果が分かるのか。これも先に決めておきたいところです。

決めていないと、やりっぱなしになります。そして数か月後、効果があったのかなかったのか分からないまま、また別の施策に手を出すことになってしまいます。

確認のしようがない施策であれば、それは優先度を下げてよいという判断材料にもなります。

AIが出てきても幹は変わらない

検索結果にAIによる要約が表示されるようになり、AIに直接質問して情報を集める人も増えました。それにともなって、新しい対策の必要性を説く情報も数多く出ています。

ただ、冷静に見ていただきたいのは、この変化で影響を受けるのは主に「見つけてもらう」と「開いてもらう」の部分であって、フローそのものが変わったわけではないという点です。

人が困りごとを抱えて、解決してくれそうな相手を探し、内容を確認して、連絡を取り、依頼する。この流れ自体は、検索エンジンが登場する前から変わっていません。

そして、AIが答えられない部分――その人固有の事情に、専門家として応じる部分――は、フローの後半にあたります。ここはむしろ相対的に重要度が上がっています。

新しい対策の話を聞いたときは、それがフローのどこに効くものなのかを尋ねてみてください。答えられない提案であれば、急いで取り入れる必要はありません。

結論

ウェブサイトに手を加えるときは、いま自分がどの部分を強化しようとしているのか、そしてその判断は何を根拠としたものなのか、目的達成に効果的な手段なのか、逐一ウェブ営業の基本的なフローに立ち返って「考えてみる」ことが大切です。

結局、「人」が何を希望していて、それに対して「人」がなにを提供できるのか。

そこさえぶれずにカタチにできれば、細かな技術が伴わなくとも、需要と供給はしっかりマッチすることになりますから。

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