「最近、ホームページのアクセスが減ってきた気がする」
このような話を、士業さんから聞くことが増えました。記事を消したわけでも、検索順位が大きく落ちたわけでもないのに、訪問者の数だけが少しずつ減っている。その原因として考えられるものの一つが、AIの登場です。
この記事では、AIの登場によって士業事務所を探す側の行動がどう変わったのか、ホームページのアクセスに何が起きているのか、そして士業事務所のホームページにこれから何が問われるのかを書いていきます。
相談者は事務所を探す前にAIへ聞くようになった
少し前まで、困りごとを抱えた人の行動はおおむね決まっていました。まず検索する。出てきたホームページをいくつか開いて読み比べる。自分では難しそうだと分かったら、よさそうな事務所に連絡する。士業事務所のホームページは、この流れの最初から最後までを受け止める場所でした。
ところが、この流れの最初の部分である「調べる」が、AIに置き換わりつつあります。
たとえば、以前であれば「相続放棄 期限」と検索していた人が、いまはChatGPTやGeminiなどのAIに「父が亡くなって、あとから借金があることが分かった。どうすればいい?」と、自分の状況をそのまま打ち込みます。するとAIは、その人の状況に合わせて、考えられる手続きや期限、次に何をすればよいかまで整理して答えてくれます。
まずAIに相談する人が増えた
検索は、単語を並べて、出てきたページの中から自分に関係のある部分を探す作業でした。AIへの相談は、文章で状況を伝えれば、自分に合わせた答えが返ってきます。夜中でも、同じことを何度聞いても、初歩的な質問でも、気兼ねがいりません。
「士業事務所に電話するほどのことなのか、まだ分からない」という段階の人にとって、AIはとても相談しやすい相手です。相談の場で「AIに聞いたらこう言われたのですが」と切り出されることが増えた、という話も士業さんから聞くようになりました。
「うちの相談者は年配の方が多いから、AIなんて使っていないよ」と思われた士業さんもいらっしゃるかもしれません。
ただ、相続や成年後見のように、ご本人ではなくお子さんの世代が調べて事務所を探すことの多い業務もあります。また、あとで書くように、Googleで検索しただけでもAIのまとめた答えが表示されるようになっています。AIを使っているつもりのない人も、知らないうちにAIの答えを読んでいる可能性は高いですよね。
検索結果にAIの答えが表示され訪問が減っている
Googleの検索結果には、2024年8月から「AIによる概要(AI Overviews)」が日本語でも表示されるようになりました。これは検索結果のいちばん上に、AIが複数のサイトの内容をまとめた答えが出てくるものですが、既に知っている士業さん(というより活用している士業さん)も多いのではないでしょうか。
以前であれば、検索結果に並んだホームページのどれかを開かなければ、答えは分かりませんでした。いまは、検索結果の画面を見ただけで用が済んでしまうことがあります。検索結果には表示されているのに、開いてもらえないという状態です。
このように、検索はされたものの、どのホームページも開かれないまま終わる検索は「ゼロクリックサーチ」と呼ばれています。天気や言葉の意味のように、検索結果の画面を見れば答えが分かるものは以前からありましたが、AIによる概要の登場によって、その範囲が制度や手続きの説明にまで広がってきました。
SEOツールを提供しているAhrefsの調査では、AIによる概要が表示される情報収集型の検索において、日本でも検索1位のページのクリック率が、見込まれている水準の半分以下になっていたと報告されています(2026年6月時点)。
表示回数とクリック数は分けて見る
Google Search Consoleの検索パフォーマンスには、検索結果に表示された回数である「表示回数(インプレッション)」と、実際に開かれた回数である「クリック数」があります。アクセスが減ったと感じたときは、この2つを分けて見てみると、何が起きているのかが分かりやすくなります。
- 表示回数はあまり変わらず、クリック数が減っている → 検索はされているが、AIによる概要などで用が済んでいる可能性
- 表示回数そのものが減っている → 検索をせず、最初からAIに尋ねる人が増えて、検索される回数自体が減っている可能性
どちらが起きているかは、ホームページによっても、ページによっても違います。両方が同時に起きていることもあるでしょう。
なお、2025年の秋ごろに、Search Consoleの表示回数が急に減ったというホームページが多くありました。こちらは表示回数の数えられ方に関わる変化の影響が大きかったといわれています。表示回数が減っていても、クリック数が変わっていないのであれば、訪問者が減ったわけではありませんので、あわてなくて大丈夫です。
とりわけ減ったのは「〜とは」のページ
では、どのようなページのアクセスが減っているのでしょうか。
影響が大きいのは、情報提供型のページです。「相続登記とは」「就業規則とは」「建設業許可とは」のように、制度や用語を説明するページがこれにあたります。
こうした一般的な説明は、AIがもっとも得意とするところです。どのホームページにも同じような内容が書かれているため、AIはそれらをまとめて、検索結果の上でそのまま答えてしまいます。以前はアクセスの多くをこうしたページが稼いでいた、というホームページほど、全体の数字の落ち込みは大きく見えているはずです。
一方で、「(地域名) 建設業許可 行政書士」のように、依頼先を探している段階の検索は、影響が比較的小さいようです。AIが制度を説明することはできても、当然ですが、その人の代わりに事務所へ依頼することまではできないからです。
「〜とは」のページが読まれにくくなっていることについては、次の記事でも書いています。
相談や依頼まで減ったとはいえない
ここまで読むと、「アクセスが減ったのだから、相談や依頼も減っていくのだろう」と感じるかもしれません。
ところが、そうともいえないのです。
まず、「〜とは」のページを読みに来ていた訪問者は、もともと依頼までの距離が遠い人たちでした。制度の概要を知りたかった人、自分で手続きをするつもりで調べていた人、勉強中の人。事務所の前を通り過ぎていく人は減ったけれど、相談するつもりでドアを開ける人の数はそれほど変わっていない、というホームページは少なくないと思います。
「AIにすすめられた」という問い合わせの増加
もう一つ、見逃せない変化があります。
問い合わせの際に「ChatGPTに聞いたら、おすすめの事務所としてこちらが紹介されたので」と言われた、という話を士業さんから聞くことようになりました。士業事務所ではありませんが、弊社も「AIに勧められたので」と仰っていただく機会は増えています。
AIに状況を相談した人は、ひととおり説明を受けたあと、「これは自分では難しそうだ」と感じることがあります。そのとき、以前であれば検索に戻って事務所を探していたところを、いまはそのままAIに「(地域名)で、この手続きに詳しい事務所を教えて」と尋ねます。AIはいくつかの事務所の名前を、すすめる理由とともに挙げます。
つまり、AIは訪問者を減らす存在であると同時に、事務所を紹介してくれる存在にもなっているわけです。
しかも、AIに紹介されて連絡してくる人は、すでにAIとのやりとりで自分の状況をある程度整理しています。制度の説明を一から読みに来た人よりも、依頼に近いところにいることも多いようです。
実際、AIで悩みや不安をある程度解消したうえで、具体的な解決を求めて事務所を訪れる方は、最初から「お願いします」と、依頼する前提まで話がまとまっているケースも。制度の説明から始める必要はなく、費用と進め方を確認したら、そのまま依頼に進むという流れです。
とはいえ「AIに紹介されたという問い合わせなんて、うちではまだ数えるほどしかないよ」と思われた士業さんもいらっしゃるかもしれません。ただ、AIを経由した相談者は、数が少なくても依頼につながる可能性が高いため、無視できない存在になってきています。アクセス数や問い合わせの件数だけを見ていると目立ちませんが、受任の件数で数えてみると、見え方が変わってくるかもしれません。
検索広告を出しにくい分野が生じている
これまで、士業事務所がウェブで知ってもらうための方法は、自然検索と検索広告の2つが主力でした。
自然検索は費用がかからない代わりに、上位に表示されるまで時間がかかります。検索広告は費用がかかる代わりに、出したその日から検索結果に表示されます。開業したばかりで自然検索からの訪問がまだ少ない時期を、検索広告で補うという使い方をしてきた事務所も多いと思います。
ところが、この検索広告が、分野によっては掲載されにくくなっています。
Google広告には「政府発行書類と行政サービス」というポリシーがあります。パスポート、ビザや渡航の許可、運転免許証、車両の登録、氏名や住所の変更手続きなど、公的な書類や手続きに関する広告を掲載できるのは、政府機関と、政府の公式サイトで紹介されている認定事業者に限る、という内容です。公的機関のように見せかけたサイトから利用者を守るためのものとされています。
社会保険労務士の障害年金の申請手続きや、一部の法人設立手続きなど、実際に、広告が承認されなかった、掲載が制限されたという話を聞くようにもなりました。行政書士の在留資格や自動車の登録なども、このポリシーの対象と重なって見えるようにも思えます。
もちろん、士業事務所の広告がすべて出せなくなったわけではありません。これは法令や所属される会の広告規程とは別の、Google広告という一つのサービスの中でのルールです。どの広告が対象になるかはGoogleの審査によりますし、ポリシーの内容も変わっていきます。
ただ、「自然検索が育つまでは広告で補う」「自然検索を狙うのは面倒なので広告の即効性を利用する」という選択肢を取りにくい分野が出てきていることは、知っておくほうがよいでしょう。そうした分野では、自然検索と、上で書いたAIからの紹介の比重が、これまでよりも大きくなっていきます。
AIが把握しやすくすすめやすいホームページへ
こうなると、士業事務所のホームページには、自然検索で見つけてもらうことに加えて、もう一つのことが問われるようになります。AIにとって内容を把握しやすいか。そして、AIを利用している人に対して、AIが「この事務所がよさそうです」とすすめやすいか、です。
こうしたAIに向けた取り組みは、「LLMO」と呼ばれることもあります。Large Language Model Optimization の略で、ChatGPTなどのAIの土台になっている「大規模言語モデル」に向けた最適化、という意味です。検索エンジンに向けた最適化がSEOと呼ばれてきたのと同じ並びの言葉ですね。ほかにAIOやGEOといった呼び方もあり、呼び名はまだ定まっていないようです。
「また新しい対策を覚えないといけないのか」と思われましたか?でもご安心ください、この対策は特別な技術が必要になるわけではありません。
AIに事務所を尋ねる人は、「(地域名)で、外国人の雇用に詳しくて、土曜日も相談できる事務所」のように、条件をつけて尋ねます。AIは、その条件に当てはまることがホームページから読み取れる事務所を挙げます。ホームページに書かれていないことは、AIもすすめようがありません。
誰が何をどこで引き受けるのかを文字で書く
まず、事務所の基本的な情報が、文字で書かれているかどうかです。
- 資格者の氏名、所属している会、登録番号
- 事務所の所在地と、対応している地域
- 取り扱っている業務
- 料金の目安
- 相談の方法と、対応できる曜日・時間帯
「そんなことは当然書いてあるよ」と思いましたか?ところが、料金表や対応地域が画像の中の文字として作られていたり、取扱業務がトップページのバナーにしか書かれていなかったりするホームページはいまだ珍しくありません。人が見れば分かることでも、AIには読み取りにくいことがあります。
引き受けられる場合とそうでない場合を書く
「相続・許認可・その他お気軽にご相談ください」という書き方では、AIは、その事務所が相談者の条件に合うのかどうかを判断しにくくなります。
業務ごとにページを分け、どのような方の、どのような相談に対応しているのかを書いておきます。あわせて、対応していないものも書いておくとよいでしょう。「この条件の方は、別の手続きを検討されたほうがよい場合があります」といった記述は、訪問者にとって親切であるだけでなく、AIがその事務所の得意な範囲を把握する材料にもなります。
その事務所でしか書けないことを書く
制度の一般的な説明は、AIが自分で答えられます。AIが事務所のホームページを頼りにするのは、AIが自分では答えられないことについてです。
- 手引きには書かれていないが、実際にはここでつまずく人が多いという箇所
- 案内されている標準的な期間と、実感としての期間の差
- 報酬以外に、実費としてかかるものの内訳
こうした、実務を持つ有資格者にしか書けない内容が、その事務所をすすめる理由になっていきます。もちろん、守秘義務がありますので、個別の案件が特定されないよう、よくあるパターンとして抽象化して書くことが前提です。
こうして並べてみると、いずれも、訪問者に向けて分かりやすいホームページを作ろうとすれば、もともと必要だったことばかりではないでしょうか。AIにすすめてもらいやすいホームページは、相談者にとって分かりやすいホームページの延長にあると考えています。
つまり、今後より求められるのは「相談者や依頼者の立場で考える」という思考です。この延長に「AIにもわかりやすい情報提供」が見えてきます。
SEO対策の意味がなくなったわけではない
ここまで読んで、「これからはSEOではなくLLMOなのか。いままでやってきたSEO対策は無駄だったのか」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そうではありません。SEO対策の意味がなくなったわけではないのです。
ChatGPTやGeminiなどのAIは、事務所を尋ねられたとき、その場でウェブを検索し、見つかったページを読んだうえで答えを作ることも増えましたよね。つまり、検索で見つけてもらいにくいホームページは、AIにも見つけてもらいにくいということになります。Googleも、AIによる概要に表示されるための追加の要件や特別な最適化は必要なく、これまでのSEOの基本が引き続き有効だと案内しています。
そもそも、AIがすすめる理由にできるのは、ホームページに書かれている内容です。しっかりした情報を提供していなければ、AI対策どころではありません。業務の内容、対応できる範囲、料金、実務から得た知見。これらを丁寧に書いてきたホームページは、検索エンジンにもAIにも内容が伝わりやすく、逆に中身の薄いホームページは、どのような対策を重ねても、すすめる理由を見つけてもらいにくいでしょう。
SEOかLLMOかと分けて考えるよりも、相談者に向けてしっかりした情報を書くという一つの作業が、検索にもAIにも効いていく、と捉えておくのがよいのではないでしょうか。
いまから何を始めるか
まずは、相談者になったつもりで、AIに尋ねてみてください。ChatGPTやGeminiなどに「(地域名)で(業務名)に詳しい(資格名)を教えて」と打ち込んでみます。あわせて、事務所名をそのまま尋ねて、どのように説明されるかも見てみましょう。
- 地域名と業務名で尋ねたとき、自分の事務所が挙がるか
- 挙がった事務所は、どのような理由ですすめられているか
- 事務所名で尋ねたとき、所在地や取扱業務が正しく説明されるか
- 取扱業務、対応地域、料金の目安が、画像ではなく文字で書かれているか
- アクセスが減っているのは「〜とは」のページか、業務案内のページか
AIの答えは、尋ね方や時期によって変わるので、一度の結果で一喜一憂する必要はありません。見ておきたいのは、ほかの事務所がすすめられている「理由」のほうになります。そこに挙がっている内容が、自分の事務所のホームページに書かれているかどうかを確かめてみてください。
もう一つ、問い合わせを受けたときに「何でお知りになりましたか」と尋ねるようにするのも一つの指標になります。メールフォームに選択肢を設けている場合は、「検索」「ご紹介」などに並べて「AI(ChatGPTなど)」を加えておくとよいでしょう。アクセス数には表れない変化が、ここで見えてくることもありますから。
アクセスの数字が減っていくのを見るのは、気持ちのよいものではありません。ただ、減っているのがどのページなのか、問い合わせがどこから来ているのかを分けて見ていくと、見え方は変わってくると思います。






