自分のこととはいえ、士業事務所の特徴が何であるのか、ウェブサイト(ホームページ)のキャッチコピーなどで悩まれる方も多いと思います。
あなたの事務所ならではの特徴を考えるとき、士業(代表者)さん本人の属性や性格、経歴などの特徴と、取り扱う業務内容の特徴を掛け合わせると、比較的スムーズに答えが出ることもあります。
以下、方法のひとつとしてご紹介します。
士業本人の特徴と業務の特徴を掛け合わせる
まず士業さん本人に属する特徴としては、たとえば次のようなものを挙げることができます。
- 若い
- 年配
- 几帳面
- 大胆
- 地元出身
- 地方を転々
- 外国語が話せる
- 計算や帳簿に強い
- 図面が作れる
- 会社員だった
- 公務員だった
- 別の業界で働いていた
- 一つの資格しか持っていない
- 別の資格を持っている
- 会社を経営している
- ITに強い
- AIに強い
- 体力がある
- 法律に詳しい
- 人と人の調整が得意
- 一人で経営している
- 多人数で運営している
また、業務内容の特性として、たとえば次のようなものを挙げることができます。
- スポット案件
- 継続案件
- 急ぎの案件
- 長期間を要する案件
- 近場で済む案件
- 遠距離移動を要する案件
- 実現が容易な案件
- 手続きが煩雑な案件
- 計算や数値の分析を要する案件
- 法律的な解釈が求められる案件
- 若い人からの相談が多い
- 年配の人からの相談が多い
- 外国人からの相談が多い
- 他士業からの相談が多い
- 個人からの相談が多い
- 中小企業からの相談が多い
- 大企業からの相談が多い
- 公的機関からの相談が多い
- 相談をためらう案件
- 人生経験を求められる案件
この2つを掛け合わせて事務所の特徴を作り出せないか、検討します。
もちろん、相性の良い組み合わせと、どうにも結びつきにくい組み合わせがありますから、士業の特徴と業務内容の特徴は、できるだけ多く挙げておくほうがスムーズに行きます。
いまなら、こんな項目も加えられます
この記事を最初に公開した2014年当時と比べて(途中でコロナ禍などもありましたね……)、士業事務所の働き方や、相談者の求めるものも変わりました。既に触れた例と少し被る部分もありますが、本人の特徴として、次のような項目も挙げられます。
- オンラインでの相談に慣れている
- 対面でじっくり話すことを大事にしている
- 特定の業界で働いた経験がある(建設、医療、飲食、運送、IT など)
- 自分も子育て中、あるいは介護を経験している
- その土地に長く住んでいる
- デジタルなやり取りが得意/苦手な人にも合わせられる
- 士業になる前に、自分も同じ手続きで苦労した経験がある
業務の特徴としても、次のような項目が加わります。
- オンラインだけで完結できる/どこかで対面が必要
- 期限が法律で決まっている
- 一度きりで終わる/定期的な更新が必要
- 相談者が高齢である割合が高い
- 家族や親族が関与する
- 事業者向け/個人向け
特に、「自分も同じ立場で苦労した」という経験は、非常に強い特徴になります。相談者からすれば、話が早いだけでなく、分かってもらえるという安心感につながりますので。
特徴の掛け合わせの例
たとえば、若くして独立・開業している士業さんであれば、若い相談者の多い業務とは組み合わせやすくなります。たとえば「20代の〇〇士が若手起業家の相談に乗ります!」的な特徴ですね。
これはさすがに当たり前すぎると思われた方でも、ある業務をいくつかの年齢層に分け、たとえばその中で若い方のみに絞ったウェブサイトを制作するところまでは通常手が出せていません。
従って、業務特化型のウェブサイトを制作する場面において、ある業務を若い人限定に絞って作ることはできないか、検討してみるのも一考です。
ほかに、几帳面な性格で法律に詳しいからこそ、実現するための手続きが煩雑な案件に対応できるという特徴になりますし、大胆で体力があるからこそ、遠距離移動を要する案件や長期間を要する案件などにもフットワーク軽く対応できるという特徴になります。
ただしこの場合、直球で「体力のある〇〇士だから」というキャッチコピー化はおかしなことになるため、「〇〇マラソン大会を毎年完走中!」などのサブコピーを用いることでその特徴を補足・証明しつつ、「フットワークの軽い〇〇士が、遠方の〇〇にも迅速に代行します!」といった事務所の特徴をメインコピーで打ち出すとスムーズです。
主張には、証明を添える
いま挙げたマラソンの例は、単なる書き方の工夫ではありません。主張には、それを裏づける事実が必要だからです。
「フットワークが軽い」「親身に対応します」「経験豊富です」。こうした言葉だけを並べても、訪問者にはほとんど何も伝わりません。競合する事務所のウェブサイトにも、同じ言葉が並んでいるからです。
そこで、特徴を1つ打ち出すたびに、「なぜそう言えるのか」を事実で示せないかを考えてみてください。
- フットワークが軽い → 実際に対応したエリアの広さ、出張の頻度
- 煩雑な手続きに強い → その分野の取扱件数、勤務時代の経験
- 相談しやすい → 初回相談の時間、オンライン対応、営業時間
- 業界に詳しい → その業界での勤務年数、保有している別の資格
なお、件数や実績を数字で示す場合、集計した期間や範囲もあわせて示せる状態にしておくとよいです。根拠を伴わない優良性の表示は、景品表示法上の問題となる可能性があります。
逆の掛け合わせも検討
一見、結びつきが弱そうな特徴でも、うまく掛け合わせることで特徴として打ち出すことが可能なケースもあります。
たとえば、「一人で経営している」から「どの案件にも士業がしっかり対応いたします」とも言えますし、「多人数で運営している」から「どの案件にも余裕を持ってしっかり対応が可能です」とも言えます。
また「別の資格を持っている」から「手続きが煩雑な案件でも対応可能」とも言えますし、「一つの資格しか持っていない」からこそ「手続きが煩雑な案件でも専門家として適切な対応をしています」とも持って行けます。
ここで大事なのは、短所だと思っていた点が、そのまま長所として使えることが多いという点です。
- 開業したばかりで実績が少ない
- 一人でやっているので規模が小さい
- 特定の業務しか扱っていない
こうした要素は、見方を変えれば「代表者が最初から最後まで対応する」「その業務だけを扱っているからこそ詳しい」という特徴になるということです。
掛け合わせた結果を依頼者側の立場から置き換える
掛け合わせて出来上がった事務所の特徴は、士業側からのアピールになっていますから、これを相談者側の立場に変えてキャッチコピーを作れないか検討しましょう。
立場を転換させたほうが、事務所の特色を出しつつ依頼者の希望を叶える内容となり、共感を得やすいからです。
たとえば「20代の〇〇士が、若い起業家を応援!」するのが事務所の特徴なら、「若くして起業したことで、〇〇に困っている」「若い起業家として、もっと〇〇したい!」そんな若手起業家を、「20代の〇〇士がこれこれのサポートで応援します!」といった具合に、依頼者側を先に持ってきます。
また「フットワークの軽い〇〇士が遠方での手続きが必要な〇〇を代行します!」が事務所の特徴なら、「遠くで手続きが必要な〇〇で困った!」「遠方の〇〇が進められない!」とお困りの方、「フットワークの軽い〇〇士がさっと手続き代行しちゃいます!」といった具合に入れ替えます。
士業のキャッチコピーに関する立場転換については、別の記事でも触れていますので、よろしければご参照ください。
実際に書き出してみる手順
考え方としてはご理解いただけても、いざ自分の事務所で、となると手が止まるかと思います。実際の作業手順としては、次のように進めてみてください。
1.とにかく数を出す
まず紙を用意して、自分の特徴を10個、業務の特徴を10個書き出します。上に挙げたリストを見ながらで構いません。
ここでは良し悪しを判断しないでください。「これは特徴と言えるだろうか」と迷ったものも、とりあえず書いておきます。
数が出ないときは、次の問いが手がかりになります。
- 他の事務所の先生と話していて、自分だけ違うと感じたことは何か
- 相談者から「そういうことも分かるんですね」と言われたことは何か
- この業務を扱うようになったきっかけは何か
2.総当たりで組み合わせる
本人の特徴10個と業務の特徴10個で、100通りの組み合わせができます。すべて検討する必要はありませんが、意外な組み合わせほど、他所にない特徴になりやすいものです。
相性が良さそうなものを5つほど選んで、実際に一文にしてみてください。
3.競合のサイトと並べてみる
できあがった文を、実際に競合する事務所のウェブサイトのキャッチコピーと並べてみます。
同じようなことが書いてあるなら、それは特徴になっていません。もう一度、掛け合わせに戻ってください。
逆に、他所には書かれていない一文ができたなら、それが事務所の特徴です。
4.相談者側の立場に置き換える
最後に、上の項でご説明したとおり、相談者を主語にした形に入れ替えます。ここまでやって完成です。
作業時間としては、1時間ほどあれば形になります。喫茶店など事務所ではない場所で気軽に紙に書き出すほうが、連鎖して思い浮かぶ項目が増えるのでおすすめです。
AIの時代、この作業の価値が上がってきた
検索結果にAIによる要約が表示されるようになり、一般的な説明はAIがその場で答えてしまうようになりました。「◯◯とは何か」「必要書類は何か」といった情報は、もう差別化の材料にはなりにくいです。
では、何が残るのか。
その業務を、どこの誰が、どういう経験を持って扱っているのかという部分です。
AIは制度の説明ができます。しかし、「建設業界で10年働いた後に開業した行政書士が、現場を知ったうえで対応する」という事実自体は、生成することができません。実在する人物だからこそです。
つまり、この記事で紹介した「本人の特徴と業務の特徴を掛け合わせる」という作業は、AIに代替されない部分を言語化する作業だということになります。
一般的な情報で勝負していたウェブサイトが埋もれていくぶん、この作業でコピーの差別化から取り組んだ事務所の相対的な位置は上がります。10年以上前にご紹介した方法ですが、いまのほうが効く場面は多いかもしれません。
以上、今回は事務所の特徴を考えるため、士業個人の特徴と業務内容の特徴をかけあわせてみる方法について触れてみました。





