
士業事務所において、有料広告ではなく検索結果からの流入によってWebから直接の依頼増を図るとき、ホームページに質の伴った記事を公開して育てていくことは必須の作業といってもよいものになります。
それはわかってはいても、記事を書く時間、ホームページに手を入れる時間の確保は難しい。
弊社でコンサルティングやご相談に携わらせていただく事務所さんとの会話でも、時間捻出の問題は、それはもう日常茶飯事的に、毎日にように話題としてあがります。
空いた時間にホームページの更新を行うことは難しい
この点、開業直後の士業さんは別としても、士業事務所の大半は日々の業務進行に忙しく、
- 「この作業が終わったらホームページを更新しよう」
- 「時間が空いたら記事を追加しよう」
と思いつつ、なかなか手が回らないというのが現状ではないでしょうか。
「作業が終わったら」と思っていても、その作業完了時には「そういえば別件のメールも返信しておかないと」とか「明日の書類の準備がまだだった」など、他の作業が発生してしまい、結局「ホームページは、また今度」と更新作業が保留・延期となってしまいます。
前述のように、こういった状況は多くの士業さんが陥りやすく、逆に言えばこの思考でいるとホームページの更新は相当難しいということにもなります。
そのため、ホームページからの集客を重視するなら、発想を転換していく必要があります。
先にホームページのためのスケジュールを確保する
結論としては、「作業が終わったら」と考えるのではなく、ホームページを更新して育てていくためには、先に使う時間を確保する。これに尽きます。
業務が一段落したらと考えていても、業務が一段落することはめったにありません。それでもホームページを「たまに」更新することはできるかもしれませんが、継続的に手を入れて成長させることは困難です。
そのため、先にスケジュール帳にマーカーを引いて、ホームページ更新のための枠を確保してしまう必要があります。
以下では、弊社がコンサルティングに携わらせていただいている中で、コンスタントに記事更新やホームページの改善を行われている士業さんのケースをご紹介します。
1.毎朝時間を確保する
まず1つめは、ホームページ更新のための時間を毎朝確保するケースです。8時から業務を始めるなら、7時に事務所へ出勤して1時間はホームページのための時間としてのみ利用する。
月曜朝には記事が仕上がらなくても、翌火曜、または水曜には1つ記事が仕上がる。そんなイメージです。
2.毎週特定曜日の午前中を確保する
毎朝の時間確保が難しい士業さんの場合は、たとえば毎週水曜日の午前中をホームページ用の時間として確保するとか、火曜と土曜の午前中を記事更新の時間として確保するといったパターンを組まれるケースもあります。
平日午前の確保が難しいときは、土日の午前中とか、または(午前中ではなくなってしまいますが)土曜日をホームページ更新のための曜日と割り振る士業さんもいらっしゃいます。
ここで重要なのは「午前」ということです。これが「午後」や「夕方」「夜」となると、既に事務作業や相談対応に入っているため、その流れからホームページ更新へと作業を切り替えるのが難しくなってしまいます。
また、これは弁護士さんから話を聞くことが多いのですが、事務所に行く前に喫茶店などに寄って記事の執筆時間を確保するようにする、その際は「スマートフォンやPCでメールを見ない!」という環境を作って、記事原稿の執筆に専念しているそうです。
3.出張の移動時間は記事執筆に充てる
毎週新幹線を利用する機会があるなど、遠方への出張が多い士業さんの場合は、出張中の移動時間はホームページ更新に充当するというパターンをとるケースもあります。
また出張の多い士業さんであれば、ホテル滞在中はホームページの更新に時間を優先的に使うというケースも。
なお、移動中にキーボードを打つのが難しい場合は、音声入力で下書きを作ってしまうという方法もあります。スマートフォンの音声入力は精度がかなり上がっており、話した内容をそのまま文字にできます。
文章として整っていなくても構いません。事務所に戻ってから整えればよいので、移動中は「頭の中にあることを外に出す」ことだけに専念する、という使い方です。
時間を確保しても手が止まる、本当の理由
仮に上で説明したいずれかの方法によって、ホームページの更新に割く時間を確保することはできるようになった、としましょう。ところが、確保した1時間を、画面の前で悩んで終えてしまうという問題が、次に立ちはだかることが多いようです。
この原因は原因ははっきりしています。何を書けばいいか決まっていないのです。
時間を確保したその場でテーマを考え始めると、それだけで30分が過ぎます。残り30分で書き始めても仕上がらず、「やっぱり時間が足りない」という結論に至る。これが繰り返されると、確保した枠自体が形骸化していきます。
ネタは、業務中にしか手に入りません
記事のテーマは、机の前で考えても出てきません。出てくるのは、実務をやっている最中です。
たとえば、こういう瞬間です。
- 相談で、同じ質問を3人目から受けたとき
- 依頼者が、制度について明らかに誤解していたとき
- 役所の窓口で、手引きに書いていない対応を求められたとき
- 他の地域では通る書き方が、ここでは通らなかったとき
- 条件が合わず、依頼をお断りすることになったとき
これらはすべて、その場でメモを取らなければ、一週間後には忘れてしまうでしょう。
メモの置き場所を1つに決める
おすすめしたいのは、ネタを書き留める場所を1か所だけ決めて、そこに放り込み続けることです。
スマートフォンのメモアプリでも、手帳の最後のページでも構いません。大事なのは、場所を分散させないことです。あちこちに書くと、確保した時間に「あのメモはどこだったか」を探すところから始まってしまいます。
書き方も雑で構いません。行政書士を例に挙げるなら「建設業 常勤性の確認資料 健康保険証だけでは足りなかった件」くらいの単語の羅列で十分です。あとで自分が思い出せれば、それで事足ります。
そして確保した時間には、このメモから1つ選んで書き始める。そうしないと、せっかく確保した時間もPCの前で「うーん」とうなるだけで終わってしまいます。
1本を1回で仕上げようとしない
もう1つ、手が止まりやすい原因があります。1回の作業で記事を完成させようとしていることです。
記事を書く作業は、実は次のように分けられます。
- テーマを決める
- 見出しだけを並べて骨組みを作る
- 本文を書く
- 読み返して整える
- WordPressに入れて、画像や内部リンクを設定して公開する
このうち2つめの「見出しだけを並べる」は、15分程度で仕上がるのではないでしょうか。3つめの本文は、見出しが決まっていれば埋めるだけなので、ゼロから書くより格段に速く進みます。
つまり、1時間まとめて取れない日でも、作業は前に進められるということです。今日は骨組みだけ、明日は前半だけ。この進め方のほうが、結果として公開本数は増えます。
「今日は1時間取れないから、また今度」で止まってしまうのが、いちばんもったいないパターンです。
生成AIは、どこに使うべきか
この記事を最初に公開したのは2022年の秋で、当時はまだ選択肢に入っていませんでした。いまは事情が変わりましたので、あらためて触れておきます。
結論から言えば、AIは「時間を作る道具」として使い、作った時間を「自分にしか書けない部分」に投じる。この使い方は比較的有効ではないでしょうか。
向いている使いどころ
- メモした単語から、記事の骨組み(見出し案)を作らせる
- 自分で書いた長い文章を、読みやすく分割・整理させる
- 一般的な制度説明の部分を、下書きとして書かせる
- 書き上がった記事を読ませて、抜けている論点を指摘させる
特に1つめは効果が大きいです。前の項でお伝えした「見出しだけを並べる」作業を、数分に短縮できます。
使ってはいけないところ
一方で、次の部分に使うのは避けてください。
- 事実関係の確認……AIは要件や期限、金額が正しくないこともあります。
- 実務に基づく部分……AIは、その事務所の経験を知りません
そしてもう1つ、見落とされがちな点があります。
AIが出力する内容はほぼ、現在どこかで公開されている情報になります。つまり、多くの事務所が既に同じ内容で公開しているということです。AIに書かせた記事をそのまま公開するのは、競合事務所と同じ混雑した海に浸るために時間を使っているのと変わらなくなってしまいます。
AIで浮いた時間を、その事務所でしか得られない情報の書き足しに使う。「いやいや、その事務所ならではの情報なんてそうそうないよ」と思われた士業さんは、その事務所でしか得られない情報ではなく「その事務所ならではの説明、その士業さんならではの話し方」で説明する記事にする。これによっても差別化を図れます。
7割の出来で公開してしまう
時間が捻出できない理由として、意外と多いのがこれです。
完成度を上げようとして、公開できずに溜まっていく。書きかけの記事が3本あるけれど、どれも公開していない、という状態の士業さんは少なくありません。
士業さんは職業柄、書類の正確性に厳しい方がほとんどです。その姿勢が、記事の執筆にも出てしまうのだと思います。
ただ、ホームページの記事には紙の書類にはない利点があります。公開したあとから、いくらでも直せるということです。
7割の出来で公開しておいて、後日読み返して加筆する。これで何の問題もありません。むしろ公開しておいたほうが、検索エンジンに認識される時期が早まる分、有利です。
完璧な記事を3か月に1本より、7割の記事を月に2本。後から読み直して気になるところに加筆する。このほうがコンスタントに更新することができます。
続けるために、何を見るか
記事を書き始めた士業さんが挫折する理由の大半は、書いても書いてもアクセスが増えないことです。
ここは、あらかじめお伝えしておきます。記事を公開してから検索結果に反映され、実際の問い合わせにつながるまでには、数か月かかるのが普通です。これは記事の質の問題ではなく、いまのウェブがそういう作りになっていると思ってください。
ですので、毎日アクセス数を見るのはおすすめしません。数字が動かないのを毎日確認する作業は、書く意欲を削いでしまいます。
どうしても何か数字を指標にしたいという場合は、次の2つをおすすめします。
- 今月、記事を何本公開したか……自分でコントロールできる数字です
- 検索結果に表示された回数……アクセス数より先に動くため、変化に早く気づけます
特に1つめが大事です。アクセス数は自分では動かせませんが、公開本数は自分で決められます。続けるための指標としては、こちらのほうが適しています。
「書き続けない」という判断もあります
最後に、少し違う角度からの話を。
ここまで、記事を書く時間をどう作るかについて書いてきましたが、すべての士業事務所が記事を書き続けるべきだとは考えていません。
たとえば、次のような事務所さんです。
- 紹介だけで十分に案件が回っており、新規の受任枠がない
- 扱う業務の性質上、検索で探される機会がそもそも少ない
- 記事を書く時間を確保すると、本業の質が落ちる
こうした場合、無理に新規記事を増やすより、既存ページの内容を最新に保つことだけに絞るほうが合理的です。法改正や制度変更が反映されていない古いページは、それ自体が事務所の信用を損ないますから、そこだけは手を入れる。
年に数回、既存ページを見直す時間を取る。それだけでも十分な運用です。公開されている情報が正しい状態に保たれていることは、AIの登場によって今後ますます重要になってくるはずです。
ホームページを第2の事務所として機能させるために
ホームページをWeb上の士業事務所として機能させ、そこに自分の分身を作り上げてサイト訪問者への接客・応対を行う。初回相談の半分は、ホームページ上で既に完了している状況を作る。
検索結果の流入からWeb直接の集客を図る場合、上記の状況を構築できれば強いです。
もっとも、Web上に第2の事務所を機能させるための作業は片手間には難しく、それなりの手間と時間を要します。
だからこそ、先にそのためのスケジュールを可能な限りで確保してしまいたいところです。
第2事務所(Web事務所)のための時間を確保したら、その時間を第1事務所(リアル事務所)のためには使わない。そういった線引きを強めに図らないと、ホームページを効果的に機能させること、リアル事務所以上に集客できるWeb事務所を構築することは、なかなかに難しいです。
いまから何を始めるか
最後に、これは内容が繰り返しになってしまいますが、更新時間の確保に悩む士業さんが「いま始めること」について。
ネタを書き留める場所を1つ決めて、そこに気づいたことを書き込むようにしましょう。
上で「ネタは、業務中にしか手に入りません」と述べましたが、すみません、実はこれは正確ではありません。ネタは意外と「車を運転しているとき」「電車を待っているとき」「お風呂に入っているとき」など関係ないときにも急に降ってくるものだからです。これらも、できるだけ早めに拾ってネタの倉庫に放める仕組みを構築してください。
時間の確保も、執筆の工夫も、そういった材料があって初めて機能するからです。
IWAMOTO
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